福利厚生費の税務上の取り扱いについて
福利厚生費の基本的な考え方
従業員などに対する福利厚生費は会社運営を円滑に行うに必要なものですから、当然会社の経費として積極的に計上したところだと思います。
しかしながら、税務上、具体的に定められている部分が少ない一方で、税務上定めのある部分はかなり許容範囲が少ないため判断するのに悩ましい経費だといえます。
福利厚生費として計上するためには以下の要件を充たしている必要があります
1.会社の役員及び従業員の全員を対象にしたものである必要があります。
特定の従業員や一部の従業員だけを対象にしたものですと対象となった従業員の給与として扱われてしまうので注意が必要です。全従業員を対象とした経費であることが前提です。
2.金額や使用用途が世間相場からして妥当なものであることが必要です。
税務上、明確に許容されている福利厚生費自体は多くありません。しかしながら、税務調査で世間で一般的に行われている忘年会・新年会まで経費算入を否認されるということはないと思います。ただし、その金額があまりにも高額であったり、忘年会と称して頻繁に行っている場合は否認される可能性はあると思います。
1.忘年会・新年会・歓送迎会などのについて
忘年会・新年会・歓送迎会などの一般の会社で行われているものであれば福利厚生費として経費に計上することは出来ます。ただし、冒頭にも述べましたように全員参加が原則です。もちろん、都合が合わない・体調不良などで参加できない方がいるという場合に参加しない方がいるのは問題ありません。
また、そういった場合に1次会、2次会、3次会と続いた場合どうなるかが気になるところだと思います。1次会は全員参加として、2次会以降は希望者だけとなっていくかと思いますので1次会までを福利厚生費としておくことが無難だと思います。
また、全社単位で行う場合もありますが、部単位で行う場合もあるかと思います。ある程度人数がまとまった部や課といった単位で行うのであれば福利厚生費としてとらえてよいと思います。ただ、あまり特定の方と頻繁に行う場合は避けた方が無難だと思います。
整体やマッサージ・スポーツジムの経費
整体やマッサージ・スポーツジムなどの領収書を会社の経費としてお持ちになる方もたまにいらっしゃいます。気持ちは非常に分かります。体の調子を整えて、仕事の能率を上げるために必要なビジネス上の経費ではないかということだと思います。従業員が何人かいて、月1回の整体やマッサージの利用料やスポーツジムの月額会費を福利厚生制度として全従業員を対象として会社が負担ということであれば福利厚生費として認められる可能性はあると思います。ただし、特定の方(例えば役員だけとか)しか利用していないなどの利用実績等をみたうえで否認されることも十分考えられます。また、従業員等がいなく、社長と奥様だけの会社で整体やマッサージの利用料を経費に入れているとこちらは確実に否認されると思います。実際はなかなか経費に入れにくいということですね。
税務上の福利厚生の取り扱い
国税庁のタックスアンサーには交際費等と福利厚生費との区分について以下のような説明があります。
ただし、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用については交際費等から除かれ、福利厚生費などとされます。
また、社内の行事に際して支出される金額などで、次のようなものは福利厚生費となります。
(1) 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
(2) 従業員等(従業員等であった者を含みます。)又はその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用(例えば、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどがこれに当たります。)
会社が役員及び従業人の食事代を補助した場合
国税庁のタックスアンサーには役員や従業員に食事代を支給する際の取り扱いについて以下のような説明があります。
役員や使用人に支給する食事は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。
(1) 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2) 次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を差し引いた金額が給与として課税されます。
仮に1カ月の利用日数を20日間だとして計算すると3,500円÷20日=175円ですから、一日175円が限度ということになります。一日のランチ代の補助としてはちょっと少なめですね。
残業食事代の支給
また、残業食事代については上記のタックスアンサーには以下のように記載があります。
また、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与として課税されます。
なお、残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっています。
残業時の食事代については、金銭で行う場合は「深夜勤務者に対して1食あたり300円(税抜き)以下」しか認められないが、会社がピザの宅配や出前をとって現物を支給した場合は、その実費については給与として課税されないということになります。
まとめ
福利厚生費は税務上、明確な規定がないのでどこまで経費算入してよいのかどうか分かりにくい経費です。全員参加を前提に常識的な範囲内での経費算入をおススメします。